2014年12月6日まちあるきの様子

2014年12月6日の午後1時より、まちあるきを行いました。前半は天候に恵まれ、参加された皆さんも意気揚々とまちあるきを楽しんでおりましたが、後半からは急に雲行きが怪しくなり、話し合いの場として用意していました地域集会所に足早に向かうことになりました。地域集会所での話し合いでは、皆さんのご意見をお聞きし、またポストイットにてお書きいただきましたものを集約し、解散をいたしました。

集合場所は上石神井駅の南口にある駅前広場です。そこでご参加いただいた皆様へ、今回のまちあるきの主旨および概要を簡単に説明いたしました。一通り説明が終わったところで千川上水緑道へ向け、いざ出発です。
上石神井駅から関東バスの青梅街道営業所まで、まっすぐ南に伸びる通りを進みます。駅の付近は飲食店や商店が両脇に立ち並びますが、駅から遠ざかるにつれて店舗よりもマンションや住宅が目につくようになります。やがて千川通りに突き当りますので交差点を右に曲り、立野橋に到着いたします。この立野橋は今回見て回ります千川上水緑道の整備区間の片方の端の部分に当たる地点です。いよいよここから千川上水緑道とその周辺を見て回ります。


まちあるきをしながら、要所要所で説明をしてまわります。まちづくりのグループである「まっぷす」は平成16年から10年間、上石神井を中心とする地域を対象に活動を共にしてきた人々の集まりで、『千川上水プロムナード構想』をはじめとする提案を行ってまいりました。千川上水緑道にまっぷすがかかわってきた経緯や学んだことを皆さんにお伝えしてきました。街路樹の高さや間隔のイメージは私たちの身体的なスケールよりはるかに大きく掴みづらいのですが、風船を街路樹に見立てて浮かばせることによって、風船が列をなして並ぶ空間を作ることができます。そこで多くの方に参加していただき、あたかも街路樹が立ち並ぶかのような空間を実感できるイベントを開催しました。車道や歩道や植栽などそれぞれある程度の幅で確保したいのだけれども、道路の幅は限られており、多くの望みを盛り込むには無理があります。その中で自転車レーンをどのように設けたらよいのか、すでに完成した自転車レーンを見学に行ったりディテールや走行についての話し合うイベントを行ったりしてきました。

千川上水緑道に隣り合って、小さな公園がところどころにあります。せいぜい大人が4人から5人も入れば窮屈に感じられるであろう規模のものです。ある公園にはスツールがいくつか設置してあり、またある公園には大きく枝を拡げ存在感のある桜が植えてあるものもあります。中には、下草は刈り取られず柵がしてあり人が入れない公園もあります。いずれの公園も緑道とは別物のように存在しており、整備の時期の違いや管轄の違いから設置したであろうフェンスで仕切られた個所もあります。通行のための緑道と立ち寄れる公園とが、行き来できるよう一体として整備されていたらと思わざるを得ません。一体として整備し、緑道と公園とが適度につながり、また適度に区切られているように空間をデザインするよう、まっぷすは提案してまいりました。
緑道を通行する人々は休息し、近所の住民はくつろぎに訪れる。ふとした天気の急変の時にはやり過ごし、夏は日差しを遮り、冬は暖かな日差しを浴びる。冷たい風を遮り、月や星を眺め、草木を愛でたり、虫や鳥たちの存在を身近に感じることのできる、そして訪れる人同士が気さくに語り合える場所に生まれ変わったら、どんなに素敵なことでしょう。そこを通るのが楽して、毎日訪れたくなるでしょう。

青梅街道の伊勢橋(関町一丁目交差点)から上流は、千川上水の開渠区間が続きます。伊勢橋から上流数十メートルまでは千川上水に住居が接し、ところどころに対岸の道路からご自宅へアクセスするための橋がかかっています。ちょっと上流に行くと「たけしたはし」があります。その橋のたもとから数メール上流へいった部分では、コンクリート製の杭が打ってありますが、岸辺は土のままであまり手を加えられたようには見えません。広がる畑とあいまって、千川上水が周辺の住民に利用されていた当時の風景を感じさせてくれます。そこからの上流方面では、修景的に整備された区間が続きます。護岸は自然石が積み上げられており、両岸には植栽が施されています。千川上水の各方面についての標識や案内が掲げられています。伊勢橋の付近には祠もあります。鳥居と狛犬を備え、解読することはできませんでしたが石碑もいくつかありました。


まっぷすでは千川通りの拡幅事業区間と隣接する千川上水緑道がもっとすてきな空間になるように、平成20年3月に7つの提案を、平成21年3月に10の提案を行いました。この活動の中で拡幅道路区間における街路樹のあり方が浮かび上がり、「千川上水緑道の樹木の移植場所を考えます」というテーマで検討を重ねてきました。拡幅工事の始まる前に千川上水緑道に植えてある樹木の観察を行いました。観察結果の動画がございますので、よろしかったらご覧ください。
拡幅工事前に植えられていた樹木は、状態の良いものは残し、移植の困難なものは伐採されることになりました。残されることになった樹木は、工事期間中、一時的に近くの空地に保管されていたりしていましたが、工事が進むにつれ計画に基づいて移し替えられていきました。種類としてはケヤキやカエデが多く、内容については「移植の様子」に書いてあります。立野橋の交差点と関町一丁目の交差点のちょうど中間付近に、千川通りと接続する道路のゲート状に、サイカチとエノキをシンボルツリーとなるように植えましたが、サイカチは状態が良くなかったためか伐採され、現在では切り株を残すのみとなっています。

千川通り拡幅事業区間では、その途中でいくつかの道路と接続しています。そのほとんどは周辺にお住まいの方がご自宅へ至るために通行する道路ですが、上石神井体育館から西武新宿線と踏切で交差し、新青梅街道まで続く道路は、おそらく通り抜けに便利なためなのでしょう、狭い割には車の交通量が多いような気がします。青梅街道と交わる関町一丁目の交差点と、上石神井体育館前の交差点とは接近していますので、車の右折の仕方や歩行者の横断方法など、交通をどう処理するのか、というデザインが気になる交差点です。

千川通り拡幅事業区間では、下り方向に新たに自転車レーンが設けられました。上り方向の歩道および自転車レーン部分は、ブログを執筆している時点では工事はこれからです。車道側には東京都道に用いられるイチョウをモチーフにした緑色のガードレール、その外側にグレー系のインターロッキングブロックを敷き詰められた自転車レーンがあり、植樹帯を挟んで、歩道が続きます。車道と自転車歩行者道との高低差は抑えられ、縁石には自転車歩行者道の雨水を車道側に流し出す開口部が設けられています。南側には歩道より一段高い位置に千川上水緑道が道路に沿って設けられており、歩道と緑道の間は勾配のある植樹帯で仕切られています。さらに詳細に見ていきますと、交差点の手前には点字ブロックがあります。千川上水緑道と歩道との合流付近には、自転車を減速させるためのポールの設置してある個所もありました。自転車レーンと歩道の別を判断するためのサインは頭上や路面に表示されてあります。勾配のある植樹帯の周りには、土留めやロープを渡した柵があります。これらをひとつひとつ丹念に見直していきたいとまっぷすは考えています。

道路の拡幅事業で生じた三角形に残る敷地があります。将来実施されるであろう道路計画のために買収された用地のようです。立野橋交差点と面するセブインイレブンの間に挟まれた隅切り状の空地や、関町一丁目交差点の上石神井体育館に隣接するマンション前の空地などがあります。関町一丁目交差点前の土地は、千川上水緑道の樹木を移植する際に一時的に樹木を保管するために利用されていましたが、現在ではその役目を終え、柵で四方を覆われて人が入れないようになっています。セブンイレブン前では植栽がされていますが、真ん中に常緑の樹木が一本植えられているます。当初はツツジが隙間なく均一に植えられていたのでしょうが、現状では雑草が敷地の半分くらいを占めています。いずれの土地も、人の手があまり入っていないように見受けられます。何もなされないのはもったいないことです。このままの状態が続くと荒れる一方です。そうすると周囲の雰囲気を好ましくないものにしてしまうでしょう。
千川上水緑道の一部区間には、工事に未着手の敷地があります。戸建住宅の連なる生活道路と千川通りとが接している部分です。生活道路と千川通りでは高低差があり、おそらく自動車の交通のための勾配を確保できないためでしょう、車では行き来することはできません。そのかわり歩行者や自転車は通り抜けることができ、スロープと階段が設けられています。歩行者や自転車の通行は確保したいが、高低差がありスロープ等をどのように設けるのかが難しい、というのが工事に未着手の理由の一つのようです。この難しい問題を逆手にとって、皆さんで解決策を提案していきたいとまっぷすは考えています。高低差があるということは、空間が立体的であるということです。車が通らないということは、空間的なゆとりをもたらします。スロープや階段はデザインの要素として大いに活用できるでしょう。生活道路と千川通りとが接する街角には、表現も必要でしょう。

帰路につきます。セブンイレブンの角を曲がり、バス通りを抜けて上石神井区民地域集会所へ向かう途中、高層のマンションを見かけました。その向かい側にも建設途中の高層のマンションがあります。都市計画での用途地域は近隣商業地域に定められており、建蔽率は80%、容積率は400%となっております。上石神井駅のすぐ西側には、外環の予定地が南北に貫いています。その地域では建築制限のため木造2階建ての建物が連なっており、駅付近では居酒屋などの間口の狭い店が軒を並べる路地が特徴的です。上石神井の駅を中心とする町並みは、外環地上部分の街路をはじめ、西武新宿線と道路との立体交差化や車両基地の今後の在り方など、大きく様変わりしていくことでしょう。

上石神井区民地域集会所に戻り、今回のまちあるきについての意見交換および検討会を行いました。まずはあらためてまっぷすの今までの活動や、今回企画しましたイベントまでに至った経緯などをお話しいたしまして、その後に皆様のご意見をお聞きし、出されたご意見について話し合いました。後半では、街路の照明のありかたに議論が集中いたしました。低い足元を照らす照明が点々と連なる光景は、夜間歩きやすいのはもちろんですが、あるい光は葉を照らし、あるい光は路面や縁石などを照らし、葉の間から光が漏れて煌めくことでしょう。雨で葉や石が濡れている時はまた格別でしょう。破壊されるといった被害の心配もありますが、そのような行為のない過ごしやすいまちであることを望みます。